新規入場者教育の記録、何を書けばいい?【空欄ひな形+記入例つき】


初心者

ビーバー監督
「新規入場者教育の記録を作れと言われたが、何を書けばいいのか分からない」 「様式は自分で作っていいのか」 「教育で何を話せばいいのかが、そもそも分からない」
現場に人が入るたびに発生する作業なのに、やり方を教わる機会がほとんどない書類です。
この記事では、記録に何を書くかを実務の順番でまとめます。空欄のひな形と架空の記入例も置いてあるので、そのまま写して使ってください。
- 初めて新規入場者教育の記録を作る新人監督
- 様式をどれにすればいいか分からない人
- 教育で何を話せばいいか迷っている人
- 様式はまず元請に確認。指定がなければ全建統一様式第7号が業界標準
- 教える中身は労働安全衛生規則第35条の8項目+その現場固有のこと
- 記録で一番見られるのは**「実施日が入場日より前か」**
- 「安全に配慮した」では意味がない。 場所と物を特定して書く
まず:様式は自分で作らなくていい #
ここで時間を使う人が多いので、最初に書きます。
| 順番 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 元請の指定様式があるか(あれば必ずそれを使う。これが最優先) |
| 2 | 会社に既存のひな形があるか |
| 3 | 無ければ 全建統一様式第7号「新規入場時等教育実施報告書」 |
全建統一様式は全国建設業協会がまとめた安全書類の標準セットで、建設業では広く使われています。第7号がこの教育の報告書にあたります。
ExcelやPDFの様式は複数のサイトが無料で配布しているので、ゼロから作る必要はありません。
元請が様式を指定している現場で独自の書式を出すと、作り直しになります。
「新規入場者教育の様式は、御社の指定がありますか」——着手前にこの一言を聞くだけで防げます。
なぜこの記録が必要なのか #
「新規入場者教育」は、実は法令上の名称ではありません。 実務でそう呼ばれているだけです。
背景にあるのは、この2つです。
| 根拠 | 中身 |
|---|---|
| 労働安全衛生法 第59条(具体項目は労働安全衛生規則 第35条) | 作業員を雇う事業者に、雇入れ時・作業内容変更時の安全衛生教育の実施義務 |
| 労働安全衛生規則 第642条の3 | 元方事業者には、関係請負人が行う教育への指導・援助の義務 |
つまり教育の実施義務は、その作業員を雇っている会社(下請)にあります。 元請は、それが行われるよう場所や資料を提供して援助する立場です。
実務では、その現場に初めて入る人へ、上の教育と現場固有のルールをまとめて行う場として定着しました。それが新規入場者教育です。
特別教育(安衛則第38条)には記録を3年間保存する定めがありますが、雇入れ時教育・新規入場者教育の記録そのものの保存期間は、法令に明文の定めがない場合があります。
ただし実務では、元請や発注者が保存を求めることがほとんどです。どの記録をいつまで残すかは、元請の指示と、所轄の労働基準監督署への確認で決めてください。

初心者

ビーバー監督
何を教えるか #
① 労働安全衛生規則 第35条の8項目 #
これは法令で決まっています。
- 機械等、原材料等の危険性・有害性と、その取扱い方法
- 安全装置・有害物抑制装置・保護具の性能と取扱い方法
- 作業手順
- 作業開始時の点検
- その業務で発生するおそれのある疾病の原因と予防
- 整理・整頓・清潔の保持
- 事故時等の応急措置と退避
- その他、安全衛生のために必要な事項
② その現場だけのこと ← ここが本番です #
8項目は、どの現場でも同じことを話せてしまいます。本当に事故を防ぐのは、こちらです。
| 項目 | 具体的に話すこと |
|---|---|
| 立入禁止区域・危険箇所 | 場所を特定して。「法面上部」「仮設道路の交差部」など |
| 重機の作業範囲と動線 | 何がどこで動くか。旋回範囲、誘導員の位置 |
| 保護具の着用基準 | どの作業でどこまで要るか(墜落制止用器具を使う場所) |
| 緊急時の連絡体制 | 第一報は誰か。連絡先はどこに貼ってあるか |
| 避難経路・一時集合場所 | 口で言うだけでなく、実際に歩いて見せる |
| 最寄りの医療機関 | 名前と、現場からの所要時間 |
| 現場のルール | 作業時間・休憩・喫煙場所・駐車場 |
| 季節対策 | 夏は熱中症、冬は凍結と防寒 |
| 廃棄物の分別 | どこに何を置くか |
紙の上で説明しても、いざというときに動けません。教育の最後に、集合場所まで実際に歩いてもらうのが一番効きます。
5分で終わりますし、歩いた人は覚えています。
記録に書く項目(空欄のひな形) #
元請の指定様式がない場合、この構成で足ります。そのまま写して使ってください。
■ 現場情報 #
| 項目 | 記入欄 |
|---|---|
| 工事名 | |
| 工事場所 | |
| 元請事業者名 | |
| 作業所長(統括安全衛生責任者) | |
| 記録作成日 |
■ 教育の実施 #
| 項目 | 記入欄 |
|---|---|
| 実施年月日 | |
| 実施時刻(開始〜終了) | |
| 実施場所 | |
| 教育実施者 氏名 | |
| 教育実施者 所属・役職 | |
| 使用した資料 |
■ 受講者 #
| 氏名 | 所属(会社名) | 職種 | 経験年数 | 入場年月日 | 必要な資格・免許 | 健康状態 | 本人署名 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
■ 教育内容(実施した項目にチェック) #
| ✓ | 項目 | 補足記入欄 |
|---|---|---|
| □ | 安衛則第35条の8項目 | |
| □ | 工事概要と全体工程 | |
| □ | 立入禁止区域・危険箇所 | |
| □ | 重機の作業範囲と動線 | |
| □ | 保護具の着用基準 | |
| □ | KY活動・TBMの実施方法 | |
| □ | 緊急時の連絡体制 | |
| □ | 避難経路・一時集合場所 | |
| □ | 最寄りの医療機関 | |
| □ | 季節対策(熱中症/凍結) | |
| □ | 現場のルール(作業時間・駐車場) | |
| □ | 廃棄物の分別 |
■ 確認欄 #
| 区分 | 氏名 | 確認日 | 署名または押印 |
|---|---|---|---|
| 教育実施者 | |||
| 所属会社の責任者 | |||
| 元請 現場代理人/作業所長 |
架空の記入例 #
以下はすべて架空です。 実在する現場名・会社名・人名とは関係ありません。
■ 現場情報・実施 #
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 工事名 | 令和○年度 サンプル川 左岸護岸整備工事(第2工区) |
| 工事場所 | ○○県○○市 サンプル町地内 |
| 元請事業者名 | サンプル建設株式会社 |
| 作業所長 | 見本 太郎 |
| 実施年月日 | 令和○年○月○日 |
| 実施時刻 | 8:00 〜 8:40 |
| 実施場所 | 現場事務所 会議室 |
| 教育実施者 | 見本 太郎(サンプル建設株式会社/作業所長) |
| 使用した資料 | 現場安全衛生計画書、現場平面図、緊急連絡体制図 |
■ 受講者 #
| 氏名 | 所属 | 職種 | 経験年数 | 入場年月日 | 資格 | 健康状態 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 試作 一郎 | 例示工業株式会社 | 土工 | 6年 | 令和○年○月○日 | 車両系建設機械(整地等)技能講習 | 良好(本人申告) |
| 仮名 次郎 | 例示工業株式会社 | 土工 | 1年 | 令和○年○月○日 | — | 良好(本人申告) |
■ 教育内容(抜粋) #
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 立入禁止区域 | 法面上部および仮設道路の交差部。コーンとバリケードで区画 |
| 重機の動線 | バックホウ0.45m³が1台。旋回範囲内は立入禁止、誘導員を配置 |
| 保護具 | 保護帽・安全靴・高視認性安全服を常時着用。法面上部は要求性能墜落制止用器具を使用 |
| 緊急時の連絡 | 連絡体制図のとおり。第一報は作業所長へ |
| 最寄りの医療機関 | サンプル市立病院(現場から車で約10分) |
| 季節対策 | 朝の気温が5℃を下回る日は、法面の凍結を点検してから作業開始 |
全部「場所と物が特定されている」のが分かると思います。
❌「危険箇所を周知した」
✅「法面上部および仮設道路の交差部。コーンとバリケードで区画」
書いてあることを読んだ人が、現場を思い浮かべられるか。 それが基準です。
提出前のチェックリスト #
記入漏れ #
- 実施年月日が、その人の入場日より前か同日になっているか(入場後の日付になっていないか)
- 受講者全員の署名があるか(代筆になっていないか)
- 教育実施者の氏名・所属・役職が書かれているか
- 必要な資格・免許の欄が、実際にやらせる作業と合っているか
- 確認欄が空欄のまま残っていないか
- 現場固有の項目で、その現場に該当するものだけにチェックが入っているか(ひな形のまま全部チェックになっていないか)
不適切な表現 #
- 「安全に配慮した」「十分説明した」など、何をしたか分からない書き方になっていないか
- 危険箇所が「現場内」など漠然としていないか
- 「安全帯」と書いていないか(現在の法令用語は要求性能墜落制止用器具)
- 実施していない項目にチェックが入っていないか
- 実施時刻が実態とかけ離れていないか(10分で全項目を終えた等)
記録の扱い #
- 生年月日・住所など、必要以上の個人情報を書いていないか
- 保管場所と保管期間が決まっているか
- 元請の指定様式がある場合、そちらを使っているか
よくある失敗 #
① 実施日が、入場日より後になっている #
一番多い指摘です。 「先に入れてしまって、教育は後日」という順番は成立しません。入場前に教育するのが前提です。
忙しくて後回しにすると、記録の日付で分かってしまいます。
② ひな形のまま、全項目にチェックが入っている #
40分で12項目すべてを本当にやったのか、と見られます。実施したものだけにチェックを入れて、補足欄に具体を書くほうが信用されます。
③ 「安全帯」と書いてある #
2019年に名称が変わりました。 現在は要求性能墜落制止用器具です。古いひな形を流用すると、ここが残ります。
④ 様式が元請の指定と違う #
着手前に一言聞けば防げます。作り直しは一番もったいない手戻りです。
本記事は、実務の参考として書いています。筆者は行政書士でも社会保険労務士でも、安全衛生の専門家でもありません。
法令への適合、監査・臨検・立入検査の通過、減点や減算の防止を保証するものではありません。
法令・通達・運用は改正されます。現在の要求事項と記録の保存期間は、所轄の労働基準監督署にご確認ください。 発注者・元請が指定する様式がある場合は、そちらが優先します。
記入例の現場名・会社名・人名はすべて架空です。記入済みの記録は個人情報を含みます。 保管と廃棄の方法は、社内規程に従ってください。
よくある質問 #
Q1. 全建統一様式はどこで手に入りますか? #
複数のサイトが無料で配布しています。ただし元請の指定様式があればそちらが優先なので、まず元請に確認してください。
Q2. 教育は何分くらいかければいいですか? #
内容次第です。 時間を目標にしないでください。ただ、現場固有の話と避難経路の確認まで入れると、30〜40分にはなります。10分で終わる内容なら、何か抜けている可能性があります。
Q3. 同じ会社の人が何度も入場します。毎回やるのですか? #
現場が変われば、やります。 危険箇所も動線も緊急連絡先も違うからです。同じ現場への再入場の扱いは、元請のルールに従ってください。
Q4. 教育をやるのは元請ですか、下請ですか? #
教育の実施義務は、その作業員を雇っている事業者(下請)にあります(安衛法第59条)。元請は指導・援助の立場です(安衛則第642条の3)。実務では元請が場所と資料を用意して、合同で行うことが多いです。
Q5. 記録は何年保存すればいいですか? #
特別教育は3年保存の定めがあります(安衛則第38条)が、新規入場者教育の記録については法令に明文がない場合があります。元請の指示と、労働基準監督署への確認で決めてください。
まとめ #
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 様式 | まず元請に確認。無ければ全建統一様式第7号 |
| 根拠 | 安衛法第59条・安衛則第35条(教育義務は下請)/安衛則第642条の3(元請は指導・援助) |
| 教える内容 | 安衛則35条の8項目+その現場固有のこと。後者が本番 |
| 避難経路 | 口で言わず、実際に歩かせる |
| 最大の指摘 | 実施日が入場日より後になっていないか |
| 書き方 | 場所と物を特定する。「安全に配慮した」では意味がない |
| 用語 | 「安全帯」は旧称。要求性能墜落制止用器具 |
新規入場者教育は、書類の作業に見えてその人が無事に帰れるかどうかの話です。ひな形を埋めることより、危ない場所を本人に見せることが本体だと思ってください。
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ビーバー監督
1級土木・造園施工管理技士
造園作業員として働きながら独学で2級・1級造園施工管理技士を取得。その後、1級土木施工管理技士も独学で合格。 現在は現役の土木職員として働きながら、資格取得を目指す方に役立つ情報を発信しています。
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