作業員名簿の書き方【社会保険欄と一人親方|記入例・空欄ひな形つき】


初心者

ビーバー監督
「作業員名簿を作れと言われたが、社会保険の欄に何を書けばいいのか分からない」 「保険証の番号を書き写すのか、それとも書いてはいけないのか」 「一人親方はどう書くのか」
作業員名簿は、現場に人が入るたびに作る書類です。それなのに、いちばん重要な社会保険の欄だけ、書き方を教わる機会がありません。
この記事では、国土交通省のガイドライン(別紙3)に書かれている指示をそのまま整理します。架空の記入例と空欄のひな形も置いてあるので、そのまま写して使ってください。
- 初めて作業員名簿を作る新人監督・事務の方
- 社会保険欄で手が止まっている人
- 一人親方・日雇いの書き方が分からない人
- 元請に差し戻された経験がある人
- 保険者番号・被保険者等記号・番号は書きません。 基礎年金番号も書きません
- 健康保険と年金は保険の名前だけ。雇用保険だけ被保険者番号の下4けた
- 一人親方の雇用保険は「適用除外」。 空欄にすると未加入と見られます
- 元請に提出する前に、本人の同意が要ります(個人情報です)
- 様式はまず元請に確認。指定がなければ全建統一様式が業界標準
👉 他の書類もまとめて確認したい方へ:安全書類(グリーンファイル)一覧【誰が・いつ・誰に出すか早見表】
まず:様式は自分で作らなくていい #
ここで時間を使う人が多いので、最初に書きます。
| 順番 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 元請の指定様式があるか(あれば必ずそれを使う。これが最優先) |
| 2 | 会社に既存のひな形があるか |
| 3 | 建設キャリアアップシステム(CCUS)から出力する |
| 4 | 無ければ全建統一様式(全国建設業協会がまとめた標準セット) |
「作業員名簿は第5号」と書いてあるサイトが多いのですが、番号は発注者や自治体によって違います。 施工体制台帳・再下請負通知書・施工体系図・作業員名簿をまとめて1つの様式番号にしている自治体もあります。
番号で探さず、書類の名前で確認してください。 そして最後は元請の指定が優先です。
なぜこの名簿が必要なのか #
令和元年度の建設業法改正で、施工体制台帳に「建設工事に従事する者の保険加入状況」を書くことになりました(建設業法施行規則第14条の2)。
国土交通省のガイドラインは、この改正によって「実質的に作業員名簿の作成が義務化された」と整理しています。
つまり作業員名簿は、
「この現場に入る人は、全員ちゃんと保険に入っていますね」を元請が確認するための書類
です。だから社会保険の欄がこの書類の本体であって、他の項目はおまけ、くらいに考えて構いません。
国土交通省のガイドラインは、元請が新規入場者を受け入れるときに、名簿の社会保険欄を見て次の3つに当てはまる人を見つけたら、下請に指導するよう求めています。
- 保険の全部または一部が空欄の作業員
- 法人に所属しているのに、健康保険欄が「国民健康保険」/年金欄が「国民年金」になっている人
- 5人以上が記載された個人事業所の名簿で、同じく「国民健康保険」「国民年金」になっている人
つまり空欄は必ず指摘されます。 書くことがない欄でも、後述の「適用除外」などを必ず埋めてください。
名簿に書く項目(空欄のひな形) #
様式によって項目は増減しますが、だいたいこの構成です。元請の指定がない場合は、これで足ります。
■ 表のヘッダー(名簿の上部) #
| 項目 | 記入欄 |
|---|---|
| 作成年月日 | |
| 事業所の名称(現場名) | |
| 一次会社名 | |
| ( )次会社名(自社) | |
| 所長名 | |
| 退職金共済制度の加入(建退共・中退共・その他・無) | |
| 提出日 | |
| 元請確認欄 |
■ 作業員ごとの欄 #
| 項目 | 備考 |
|---|---|
| 番号 | |
| ふりがな・氏名 | |
| 技能者ID | CCUSに登録していれば記入。未登録なら空欄で構いません |
| 職種 | |
| 雇入年月日 | |
| 経験年数 | |
| 生年月日・年齢 | |
| 現住所 | |
| 血液型 | |
| 最近の健康診断日 | |
| 血圧 | |
| 免許・資格 | |
| 受入教育の実施年月日 | 新規入場者教育の日 |
| 緊急連絡先 | |
| 健康保険 | ← ここから本番 |
| 年金保険 | |
| 雇用保険 |
ここが本番:社会保険欄の書き方 #
国土交通省「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」の**別紙3「作業員名簿の例」**に、書き方の指示がそのまま載っています。以下はその内容です。
① 健康保険の欄 #
保険の名前だけを書きます。
| 書く | 例 |
|---|---|
| ✅ 保険の名称 | 健康保険組合/協会けんぽ/建設国保/国民健康保険 |
| ❌ 書かない | 保険者番号、被保険者等記号・番号 |
後期高齢者である等により国民健康保険の適用除外である場合は、「適用除外」と書きます。
② 年金保険の欄 #
こちらも名前だけです。
| 書く | 例 |
|---|---|
| ✅ 年金保険の名称 | 厚生年金/国民年金 |
| ❌ 書かない | 基礎年金番号 |
年金の受給者である場合は、「受給者」と書きます。
③ 雇用保険の欄 #
ここだけ番号を書きます。ただし下4けただけです。
| 状況 | 書くこと |
|---|---|
| 加入している | 被保険者番号の下4けた |
| 日雇労働被保険者 | 「日雇保険」 |
| 事業主である等により適用除外 | 「適用除外」 |
健康保険証や年金手帳の番号を名簿に書き写している現場を見かけますが、ガイドラインは「記載しないこと」と明記しています。
番号は本人を特定できる個人情報です。必要のない情報を集めてしまうこと自体がリスクになります。
一人親方・日雇いの書き方 #
ここが二番目に多い質問です。
| 区分 | 健康保険 | 年金保険 | 雇用保険 |
|---|---|---|---|
| 一人親方 | 国民健康保険/建設国保 | 国民年金 | 適用除外 |
| 日雇い | 保険の名称 | 保険の名称 | 日雇保険 |
| 年金受給中 | 保険の名称 | 受給者 | 下4けた |
| 後期高齢者 | 適用除外 | 受給者 | 状況による |
一人親方の雇用保険は、入っていないのではなく入れない(事業主だから対象外)という意味です。
ここを空欄にすると、元請からは「未加入」に見えます。 先ほどの「指導すべき3パターン」の1つ目に当てはまり、加入指導の対象になってしまいます。
必ず「適用除外」と書いてください。
国土交通省のガイドラインは、実態は雇用している労働者なのに、社会保険の適用除外である一人親方として名簿に書くケースを、指導すべき「不自然な取扱い」として名指ししています。
同じく、4人以下の適用除外者を書いた名簿を出す個人事業主が、実は5人以上を常時雇用していたというケースも挙げられています。
書類上の都合で区分を変えると、確認されたときに困るのは自社です。
架空の記入例 #
以下はすべて架空です。 実在の会社・現場・人物とは関係ありません。
■ ヘッダー #
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 作成年月日 | 令和8年11月2日 |
| 事業所の名称 | ◯◯地区 道路改良工事 |
| 一次会社名 | 株式会社サンプル建設 |
| (二)次会社名 | 有限会社テスト工業 |
| 所長名 | 見本 一郎 |
| 退職金共済制度 | 建退共 |
■ 作業員1人ぶん(全項目) #
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 番号 | 1 |
| ふりがな | みほん たろう |
| 氏名 | 見本 太郎 |
| 技能者ID | 1234 5678 9012 3456 |
| 職種 | 土工 |
| 雇入年月日 | 令和5年4月1日 |
| 経験年数 | 8年 |
| 生年月日(年齢) | 平成2年5月10日(36歳) |
| 血液型 | A |
| 最近の健康診断日 | 令和8年6月12日 |
| 血圧 | 128/78 |
| 免許・資格 | 車両系建設機械(整地等)運転技能講習 |
| 受入教育 実施年月日 | 令和8年11月2日 |
| 緊急連絡先 | 見本 花子(妻)090-0000-0000 |
| 健康保険 | 協会けんぽ |
| 年金保険 | 厚生年金 |
| 雇用保険 | 7890 |
- 雇用保険の欄は4けたしか書いていません(被保険者番号の下4けた)
- 健康保険・年金保険は保険の名前だけ。番号はどこにもありません
- どの欄も空いていません
元請に出す前に:本人の同意が要ります #
ここはほとんど知られていません。
国土交通省のガイドラインには、こう書かれています。
作業員名簿に記載する被保険者番号等は個人情報の保護に関する法律第2条第1項に規定する個人情報に該当する
そのうえで、元請企業への提出にあたっては、
利用目的(保険加入状況を元請企業に確認させること)を示した上で、あらかじめ作業員の同意を得ることが必要
とされています。
実務でどうするか #
毎回むずかしい書面を作る必要はありません。雇入れのときか、現場に入る前に、一言伝えて記録に残すだけで足ります。
「元請に保険の加入状況を確認してもらうため、作業員名簿に健康保険・年金・雇用保険の種類を記載して提出します。よろしいですか」
新規入場者教育のときにまとめて確認しておくと、抜けません。
CCUSを使うと、添付書類が要りません #
建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録している作業員については、ガイドラインは**システムの画面で名簿を確認する方法を「原則」**としています。
| 方法 | 保険の証明書類 |
|---|---|
| CCUSで確認 | 添付不要 |
| CCUSを使わない | 資格確認書のコピー、マイナポータルの印刷物、標準報酬決定通知書、雇用保険被保険者証のコピー等を提示 |
CCUSを使わない場合、これらのコピーは保険加入の確認に必要な事項以外を黒塗りして提出させることとされています。
毎回コピーを集めて黒塗りするくらいなら、CCUSに登録したほうが現場は楽になります。
提出前のチェックリスト #
社会保険欄 #
- 空欄の欄が1つもない
- 保険者番号・被保険者等記号・番号を書いていない
- 基礎年金番号を書いていない
- 雇用保険は下4けただけになっている
- 一人親方の雇用保険が「適用除外」になっている(空欄でない)
- 法人所属の人が「国民健康保険」「国民年金」になっていないか
その他 #
- 元請の指定様式を使っているか
- 受入教育の実施日が、入場日より前になっているか
- 健康診断日が1年以内か
- 必要な資格・免許が実際の作業内容と合っているか
- 本人の同意を取ったか
よくある失敗 #
① 保険証の番号を全部書き写している #
いちばん多い失敗です。ガイドラインは「記載しないこと」と明記しています。 必要なのは保険の名前だけです。
② 一人親方の雇用保険を空欄にしている #
「入っていないから空欄」としてしまうと、元請からは未加入に見えます。 「適用除外」と書いてください。
③ 法人所属なのに「国民健康保険」になっている #
これは元請が必ず指摘するパターンです(ガイドラインが名指ししています)。本当に国保でよいのか、社会保険の手続きが漏れていないか、先に社内で確認してください。
④ 技能者IDを無理に埋めている #
CCUSに登録していなければ空欄で構いません。 分からない番号を推測で書かないでください。
⑤ 前の現場の名簿を使い回している #
健康診断日・資格の有効期限・保険の加入状況は変わります。現場ごとに作り直すのが原則です。
この記事は、国土交通省「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」および同別紙3「作業員名簿の例」の記載を、現役の施工管理技士が実務の順番で整理したものです。筆者は社会保険労務士・行政書士ではありません。
法令・通達・様式は改正されます。保険の適用関係についての個別の判断は、所轄の年金事務所・ハローワーク、または加入している保険者にご確認ください。 発注者・元請が指定する様式や運用がある場合は、そちらが優先します。
この記事の記載内容によって書類が受理されることを保証するものではありません。
よくある質問 #
Q1. 様式は第5号で合っていますか? #
発注者によって違います。 「全建統一様式第5号」と呼ばれることが多いのは事実ですが、施工体制台帳や再下請負通知書とまとめて別の番号を振っている自治体もあります。番号ではなく書類名で、元請に確認してください。
Q2. 事務員や清掃の人も名簿に載せますか? #
国土交通省のガイドラインは、対象を現場で働く建設労働者としています。ただし運用は元請によって違うので、載せる範囲は元請に確認してください。
Q3. 血液型や血圧は必須ですか? #
法令で決まっているものではなく、様式に欄があるかどうかの問題です。緊急時に使う目的で設けられています。本人が答えたくない場合は、元請に相談してください。
Q4. 一人親方の労災保険はどう書きますか? #
様式に労災の欄がある場合、特別加入しているかどうかを書きます。元請によっては特別加入の証明書類の提示を求められます。加入状況は本人に確認してください。
Q5. 名簿は何年保存しますか? #
ガイドラインに作業員名簿そのものの保存期間の定めは見当たりません。 施工体制台帳の関係書類として、元請や発注者の指示に従うのが実務です。保存期間は元請に確認してください。
Q6. CCUSの技能者IDは必ず要りますか? #
登録していなければ空欄で構いません。 ただしCCUSを使うと保険の証明書類の添付が不要になるため、現場の手間は確実に減ります。
まとめ #
作業員名簿で手が止まるのは、ほぼ社会保険の欄です。覚えることは3つだけです。
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| 健康保険 | 保険の名前だけ(番号は書かない) |
| 年金保険 | 保険の名前だけ(基礎年金番号は書かない) |
| 雇用保険 | 下4けただけ |
そして、
- 空欄を作らない(書くことがなければ「適用除外」)
- 一人親方の雇用保険は「適用除外」
- 出す前に本人の同意
この4つを押さえれば、差し戻しはほぼ無くなります。
書類は、現場を止めないための道具です。毎回ゼロから考えなくていいように、自社のひな形を1つ作っておいてください。
この記事とあわせて読む #
📚 合格への近道
独学合格者が厳選した参考書ガイド
施工管理技士 独学合格者が選ぶ書籍ガイド。買って失敗しない1冊が見つかります。
ビーバー監督
1級土木・造園施工管理技士
造園作業員として働きながら独学で2級・1級造園施工管理技士を取得。その後、1級土木施工管理技士も独学で合格。 現在は現役の土木職員として働きながら、資格取得を目指す方に役立つ情報を発信しています。
プロフィール詳細を見る →関連記事
この記事を読んだ方におすすめの記事です(タグ・カテゴリの近さで自動表示)

安全書類(グリーンファイル)一覧【誰が・いつ・誰に出すか早見表】
新規入場者教育の記録、作業員名簿、再下請負通知書、持込機械等使用届——安全書類は「誰が作って、いつ、誰に出すか」が分かれば片付きます。現役監督が実務のまま一覧にしました。様式番号で迷わないための考え方、提出が遅れたときの対応、書類ごとの記入例へのリンクつき。

職人・作業員から施工管理になるには【資格は後からでいい】
作業員しか道がないと思っていませんか。土木や造園の業界には、現場に出続ける以外の仕事があります。施工管理技士の受検には実務経験が必要なので、順番は「先に施工管理の仕事に就く→あとから資格」です。造園作業員から3冠を取った現役監督が、移り方と現実を書きます。

資格を取ったのに給料が上がらない人へ【手当の額は会社で決まります】
施工管理技士の資格を取ったのに待遇が変わらない。その原因は、あなたの実力ではなく会社の給与体系です。同じ2級造園でも手当が3,000円の会社と5,000円の会社がありました。現役監督が自分の転職2回の失敗と、いまの会社の天井を調べる方法を書きます。

KY活動記録の書き方【記入例つき|「注意する」で終わらせない】
KY活動(危険予知活動)の記録に何を書くかを現役監督が解説。様式は法令で決まっていないので、元請の指定が最優先です。4ラウンド法の進め方、記録に書く項目、土木現場の架空の記入例、「転倒に注意する」で終わらせない書き方、リスクアセスメントとの違い(厚生労働省資料の対比表)まで。

新規入場者教育の記録、何を書けばいい?【空欄ひな形+記入例つき】
新規入場者教育の実施記録の書き方を現役監督が解説。まず押さえるべきは全建統一様式第7号という業界標準です。何を教えるか(労働安全衛生規則第35条+現場固有)、記録に書く項目、架空の記入例、提出前チェックリストまで。空欄のひな形をそのまま使えます。

施工計画書の目次と書き方【土木14項目の一覧+提出前チェックリスト】
施工計画書に何を書くのか、土木の公共工事で求められる14項目を一覧で載せています。差し戻されないための提出前チェックリスト、ひな形の流用で全滅しない方法、出す時期、変更施工計画書まで。新人が最初に任される書類を現役監督が実務のまま解説します。