KY活動記録の書き方【記入例つき|「注意する」で終わらせない】


初心者

ビーバー監督
「毎朝KYをやっているが、書くことが毎日同じになっている」 「様式が会社になくて、何を書けばいいのか分からない」 「リスクアセスメントと何が違うのか説明できない」
KY活動は、現場でいちばん回数の多い安全活動です。それなのに、記録の書き方を教わる機会がありません。
この記事では、記録に何を書くかを実務の順番でまとめます。架空の記入例も置いてあるので、そのまま形を真似して使ってください。
- KYボード・KY用紙を初めて書く新人監督、職長
- 毎日同じ内容になってしまっている人
- 元請から「具体的に書いて」と返された人
- KY活動の様式は法令で決まっていません。 だから元請の指定が最優先です
- 中身は4ラウンド法(どんな危険が→これがポイント→どうする→こうする)
- 「注意する」「気をつける」で終わると、記録の意味がなくなります
- 書くのは「誰が・何に・どうやって」。主語と物と動作を入れてください
- リスクアセスメントとは別物。KYは毎日・現場で・即決、RAは手順を変えるとき
👉 他の書類もまとめて確認したい方へ:安全書類(グリーンファイル)一覧【誰が・いつ・誰に出すか早見表】
まず:様式は法令で決まっていません #
ここを誤解している人が多いので、最初に書きます。
労働安全衛生法に「KY活動をやりなさい」「この様式で記録しなさい」という条文はありません。
法律が定めているのは、こちらです。
労働安全衛生法 第28条の2(事業者の行うべき調査等) 事業者は、(中略)危険性又は有害性等を調査し、その結果に基づいて、(中略)必要な措置を講ずるように努めなければならない。
これがリスクアセスメントで、努力義務です。KY活動はこれとは別の、現場の自主的な活動として広まったものです。
元請が求めるからです。 建設現場では、入場時の約束事として「毎朝KYを実施し、記録を提出すること」が条件になっているのが通例です。
法令の義務ではなくても、現場に入る条件としては実質的に必須、というのが実態です。
だから様式も、元請が指定するものがあればそれが最優先になります。
| 順番 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 元請の指定様式・指定ボードがあるか(これが最優先) |
| 2 | 会社に既存のひな形があるか |
| 3 | 無ければ、この記事の項目で作る |
リスクアセスメントとの違い #
「同じでは?」と聞かれたときに答えられるように、整理しておきます。
厚生労働省の資料に、両者を並べた表が載っています。要点はこの3つです。
| リスクアセスメント | KY活動 | |
|---|---|---|
| いつ | 設備や作業手順を変えるとき | 毎日・作業の都度 |
| どこで | 主に事務所・会議室 | 主に作業現場 |
| どのように | 時間とお金をかけて改善 | 即決・即断で回避 |
- リスクアセスメント=職場に潜む危険を根本的に減らすため。危険の程度を数値化して優先順位をつけます
- KY活動=その日の作業に潜む危険にすぐ対応するため。危険の有無で判断し、その場で決めます
どちらかがあれば片方は要らない、というものではありません。 役割が違います。
中身の進め方:4ラウンド法 #
KY活動の標準的な進め方です。厚生労働省の資料でも、この手順が紹介されています。
| ラウンド | 問いかけ | やること |
|---|---|---|
| 1R | どんな危険が潜んでいるか | 今日の作業の危険を出せるだけ出す |
| 2R | これが危険のポイントだ | 出た中から今日いちばん危ないものを絞る |
| 3R | あなたならどうする | 対策の案を作業員から出してもらう |
| 4R | 私たちはこうする | 今日やる行動目標を1つ決める |
最後は指差し呼称で確認します。
時間がないとき、監督が1Rから4Rまで一人で言ってしまいがちです。
でも作業員に考えてもらう3Rを飛ばすと、KYは「聞き流す朝礼」になります。 一人に一つ言ってもらうだけで、その日の事故の見え方が変わります。
記録に書く項目(空欄のひな形) #
元請の指定様式がない場合、この構成で足ります。
■ 基本情報 #
| 項目 | 記入欄 |
|---|---|
| 実施年月日 | |
| 工事名 | |
| 作業場所 | |
| 天候・気温 | |
| 実施時刻 | |
| 会社名(職長名) | |
| 参加人数 |
■ 今日の作業 #
| 項目 | 記入欄 |
|---|---|
| 作業内容 | |
| 使用する機械・工具 | |
| 使用する資材 |
■ KYの中身 #
| ラウンド | 記入欄 |
|---|---|
| 1R 潜む危険(複数) | |
| 2R 危険のポイント(1つに絞る) | |
| 3R 対策案(作業員から) | |
| 4R 今日の行動目標(1つ) | |
| 指差し呼称の唱和内容 |
■ 確認 #
| 項目 | 記入欄 |
|---|---|
| 参加者氏名(全員) | |
| 職長 確認 | |
| 元請 確認 |
架空の記入例 #
以下はすべて架空です。 実在の会社・現場・人物とは関係ありません。
■ 基本情報 #
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 実施年月日 | 令和8年11月5日 |
| 工事名 | ◯◯地区 道路改良工事 |
| 作業場所 | 起点側 法面部 |
| 天候・気温 | 晴れ/9℃ |
| 実施時刻 | 8:00〜8:10 |
| 会社名(職長名) | 有限会社テスト工業(見本 太郎) |
| 参加人数 | 5名 |
■ 今日の作業 #
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 作業内容 | 法面部の掘削、残土積込み |
| 使用する機械 | バックホウ0.45m³、ダンプ10t |
| 使用する資材 | 敷鉄板、単管バリケード |
■ KYの中身 #
1R どんな危険が潜んでいるか
- バックホウの旋回範囲に人が入り、はさまれる
- 掘削した法面の肩が崩れ、下にいる作業員が埋まる
- ダンプの後退時に、誘導員が死角に入り接触する
- 朝の霜で敷鉄板が滑り、転倒する
2R これが危険のポイントだ
バックホウの旋回範囲に人が入り、はさまれること
3R あなたならどうする(作業員から出た案)
- 旋回範囲をカラーコーンとバーで囲う
- オペレーターと合図を事前に決める
- 機械から離れた位置で待機する場所を決めておく
4R 私たちはこうする(今日の行動目標)
「バックホウの旋回範囲は、バリケードで囲い、中に入るときは必ずオペレーターと目を合わせて合図してから入る」
指差し呼称
「旋回範囲、進入禁止、ヨシ!」
- 1Rの危険が**「どこで・何が・どうなる」**まで書いてあります
- 4Rの目標に**「バリケード」「目を合わせて合図」**という具体的な動作が入っています
- 「注意する」「気をつける」が1回も出てきません
「注意する」で終わらせない #
ここがこの記事の本題です。
| ❌ これでは記録の意味がない | ✅ こう書く |
|---|---|
| 転倒に注意する | 朝の霜で敷鉄板が滑るので、歩く位置を鉄板の外側に変える |
| 重機に注意する | 旋回範囲をバリケードで囲い、入るときは合図してから |
| 足元に気をつける | 配線を通路の外にまとめ、残材はその都度片付ける |
| 安全第一で作業する | (目標になっていません。書き直してください) |
なぜダメなのか #
「注意する」は、行動ではないからです。
明日の朝、同じことを書けてしまいます。そして何も変わりません。
書くときに自分へ問いかけてほしいのは、この3つです。
- 誰がやるのか
- 何に対してやるのか(物・場所を特定する)
- どうやってやるのか(動作で書く)
この3つが入っていれば、その記録は使えます。
提出前のチェックリスト #
- 実施時刻が、作業開始より前になっているか
- 1Rの危険が、昨日とまったく同じになっていないか
- 2Rが1つに絞れているか(全部が重要=絞れていない)
- 4Rの目標に**「注意する」「気をつける」が入っていない**か
- 4Rが今日の作業で実際にできることか
- 参加者全員の氏名が入っているか
- その日の天候・気温が作業と関係するなら反映されているか
よくある失敗 #
① 前日のコピーになっている #
作業が変われば危険も変わります。 同じ内容が3日続いたら、その記録は見られていません。
作業内容が本当に同じ日でも、天候・人員・使う機械のどれかは変わっているはずです。
② 2Rで全部に丸をつけている #
「全部危ない」は、優先順位をつけていないのと同じです。1つに絞るから、その日の全員の頭に残ります。
③ 4Rが「安全第一で作業する」になっている #
行動目標ではなくスローガンです。その場で何をするかを書いてください。
④ 書いてから朝礼をしている #
記録を先に作って、朝礼は読み上げるだけ——これでは3Rがありません。その場で出た言葉を書くのが本来の順番です。
⑤ 新規入場者がいる日に、いつも通りやっている #
その日初めて入る人は、現場の危険を知りません。 新規入場者教育とセットで考えてください。
この記事は、厚生労働省が公表している資料(リスクアセスメントと危険予知活動の解説)および労働安全衛生法第28条の2の条文をもとに、現役の施工管理技士が実務の順番で整理したものです。筆者は安全衛生の専門家でも、社会保険労務士・行政書士でもありません。
法令・通達・運用は改正されます。個別の判断や、自社でどこまで記録すべきかについては、所轄の労働基準監督署にご確認ください。 発注者・元請が指定する様式や運用がある場合は、そちらが優先します。
この記事の記載内容によって、記録が受理されることや災害が防止されることを保証するものではありません。
よくある質問 #
Q1. KY活動は法律で義務づけられていますか? #
KY活動そのものを名指しで義務づける条文は、労働安全衛生法にはありません。 法律が定めているのは第28条の2のリスクアセスメント(努力義務)です。
ただし建設現場では、元請が入場の条件として実施と記録の提出を求めるのが通例です。実務上はやることになります。
Q2. 記録はどのくらい保存しますか? #
法令に定めがある書類ではないため、保存期間も決まっていません。 元請や自社の規定に従ってください。労働災害が起きたときに経緯を示す資料になるので、工事完了まで残しておくのが実務では一般的です。
Q3. 毎日やらないといけませんか? #
厚生労働省の資料では、KY活動は「毎日又は作業の都度」と整理されています。作業内容が変わるとき、新しい人が入るとき、天候が大きく変わったときは、改めて実施してください。
Q4. ボードに書くのと、用紙に書くのは違いますか? #
どちらでも構いません。 元請がボードの掲示を求める現場もあれば、用紙の提出を求める現場もあります。ボードの場合は、その日の写真を撮って記録として残すのが確実です。
Q5. 一人作業の日はどうしますか? #
一人でも、作業前に危険を確認して記録を残すこと自体は同じです。ただし3R(意見を出し合う)ができないため、一人作業そのものの可否を元請に確認してください。
Q6. リスクアセスメントもやらないといけませんか? #
第28条の2は努力義務とされています。KY活動とは目的が違うので、置き換えにはなりません。実施の要否や範囲は、所轄の労働基準監督署や元請に確認してください。
まとめ #
KY活動の記録で大事なのは、この3つだけです。
| 様式 | 法令で決まっていない。元請の指定が最優先 |
| 中身 | 4ラウンド法。3Rを飛ばさない |
| 書き方 | 誰が・何に・どうやって。「注意する」で終わらせない |
毎朝の10分は、現場でいちばん回数の多い安全活動です。形だけになるか、本当に効くかは、記録の書き方で決まります。
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ビーバー監督
1級土木・造園施工管理技士
造園作業員として働きながら独学で2級・1級造園施工管理技士を取得。その後、1級土木施工管理技士も独学で合格。 現在は現役の土木職員として働きながら、資格取得を目指す方に役立つ情報を発信しています。
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